福岡県のダム歩き

 

32)松ケ江ダム

連休も終わり。自動車高速道路は近々割引きを終了するらしい。

それで急に高速道路を走りたくなった。行く先はもちろんダム。

我が家の近くにはバイパス道路が走っていて、北九州の都市高速にも、

九州自動車道にも比較的短時間でアクセスできる利点がある。

それで、今日は九州自動車道に乗って門司方面へ走った。

九州を鹿児島まで縦貫するこの自動車専用道路は、都市高速道路よりもゆったりと作られていて走りやすい。

安心してスピードが出せる。しかし、今日は連休最後でやけに車が多い。法定速度を守らねばならない。

渋滞しなかっただけ幸運だったと思わねばならないだろう。

新門司インターで降りてすぐ左のの狭い道へUターン気味に入り、しばらく行くと松ヶ江ダムへの分岐の表示があった。

不思議な印象の寺院が右にあって、そこで車を降りるとすでに土の堰堤が見えた。しかしその向こうは森林ばかりで水がない。これは違うと思って周囲を観察すると、車が通れない遮断機の向こうに道が続いていて、その奥にダムのにおいがした。

ダムの直下に最初から行き着ける幸運はめったにないが、今回はその稀有な例になった。その所在以外は前もって調べず、先入感なしで行くのが主なのだが、今回はそれがサプライズになった。実に見事な形のいい重力式コンクリートダムであった。

 

中央溢流(いつりゅう)型コンクリートダム、というらしい。その中央の桁が少し高くなって、古武士が胸をそびやかしているような印象である。完工は1960年5月。すでに半世紀の時間が付加した貫禄があたりを払っている。ダム直下の階段を這い上がって、金網の仕切りに直面し、一瞬戻らねばならないか?と思ったが、なんとか堰堤の右へ出ることが

出来た。

堤高47mというがもっとありそうな感じ。堤長205m、満水時の容量158万立方メートル。今はかなり水位が下がっている。堰堤を渡る。中央の溢流溝の桁を渡る時、いつになくちょっと恐怖感があったのは、その石のかけ橋がいかにも狭く薄く、隙間が開いていて下が透けて見えたからだけれど、そんな気分がなぜか嫌な予感にもなった。

ダム湖の左岸へ渡り、時計回りに進み始めたが、すぐ落石やがけ崩れ、それに倒木が相次いで、少なくとも10年以上整備がなされていないような道だ。そのうちに道は道でなくなり、羊歯の生い茂った密林の観を呈してきた。引き返そうかとも思ったが、いずれ対向側からの道に通じるはずだと辛抱して進んだ。しかしそれも前途に垂直にそそりたつむき出しの絶壁が見えて、全く進むことが出来なくなった。岩壁から剥離落下した無数の巨大な岩石を乗り越えてなんとか上流からのコンクリートの溝に達し、それを降り、また岩を積んで乗りあがるとようやく対向する道に出た。時間は短かったが、遭難も覚悟した一刻だった。

戻る道では何人もの人物に出会った。普通の生活道路のようだった。釣り人も多いようだ。

周回ほぼ2000歩。苦労はその数倍であった。

下の池は山の口池ダム、堤高は15mに満たないので数えない。この堰堤からの松ヶ江ダムは絶景だった。この反対側を見るとすぐ九州自動車道が見える。また、その向こうは新門司港でフェリーと海が見える。

 

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